毎日忙しい!ですか?そうですよね。
今時の管理職は、ほぼ全員プレイングマネジャーです。つまり、部下のマネジメントをしつつ、自分も業務遂行責任を負っていますので、超多忙ですよね。
でも、仕事は待ってくれないし、新たな仕事がたくさん降ってくる。
そんな状態の人は多いのではないでしょうか?
マネジャーの人は、特に仕事の海に溺れそうになっても、部下に仕事をふれない。
むしろ、部下の分まで自分が残業してこなしてる!という声も多く聞きます。
部下に仕事をふれない理由は、
「無理にやらせたらハラスメントになっちゃうかな?」とか、
「最近、お子さんが生まれたばかりだから、ワークライフバランスを考えてあげないとなー」
などで、結局自分が残業をすることになっているケースが多いのです。
最近の若者は、管理職になりたくないという比率が増えていますが、そりゃ、こんな上司の様子を見ていたら、そうなりますよね。
部下は部下で、とても忙しい日々を送っています。
1976週からのカウントダウン
ここで、少し立ち止まって、考えて欲しいのです。
人生はカウントダウンだ、ということを。
仮に22歳で就職したとして、また定年が60歳だとした時、
私たちには、たった「1976週」しかありません。
あなたが、もし40歳なら、残りはあと1040週です。50歳なら、520週です。
これが、決して取り戻すことができない、しかし、万人に平等に配布されている最も貴重であると言っても過言でないリソース、時間です。
なのに、僕らは意外なほど、最も貴重な時間をおざなりにしてないでしょうか?
今日は、大事なリソースのマネジメント法、
タイムマネジメント
について考えていきましょう。
「時間がない!」とバタバタしている人の過半数は、タイムマネジメントは聞いたことはあっても、実際に自分の業務に取り入れていません。
ここでは、
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タイムマネジメントって何か?
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どうやって取り入れたらいいか?
について解説します。

フレデリック・テイラー
タイムマネジメントってなに?
タイムマネジメントの概念は、20世紀初頭に始まった効率化運動の一環として広まりました。
特に重要なのは、フレデリック・テイラー(Frederick Taylor)というアメリカの工業技術者です。
彼は「科学的管理法」を提唱し、作業を細かく分解して効率的に進める方法を考案しました。これにより、工場や生産ラインでの作業効率が大幅に改善されました。テイラーのアプローチは、時間や作業を管理するという考え方を組織的に取り入れる最初の重要なステップとなりました。
その後、タイムマネジメントの概念が広がり、1950年代にピーター・ドラッカー(Peter Drucker)という経営学者が、経営や個人の効率を高める方法としてタイムマネジメントの重要性を説きました。ドラッカーは「時間の管理」というアイデアを強調し、個人や企業がどのように時間を使うかがその成果に大きく影響することを示しました。
さらに、1970年代にアラン・L・ルーカス(Alan L. Lucas)やスティーブン・R・コヴィー(Stephen R. Covey)のような著名な作家たちが、タイムマネジメントを自己改善やビジネスの成功のための技術として普及させました。特にコヴィーの著書『7つの習慣』は、タイムマネジメントの考え方をさらに広げ、多くのビジネスマンに影響を与えました。
このように、タイムマネジメントは長い歴史の中で、効率的な働き方や自己管理の手段として徐々に発展してきた概念です。

スティーブンコヴィのタイムマネジメント
スティーブン・R・コヴィーのタイムマネジメントの象徴的な例として「鉢植えに砂、石、大きな石を入れる話」があります。
この例は、優先順位のつけ方と時間管理の重要性を理解するためのメタファーです。
鉢植えの例
コヴィーは「重要でないことに時間を使うと、重要なことに時間を使う余裕がなくなる」というメッセージを伝えるために、この鉢植えの話を使いました。
ちょっと想像してください。
あなたの目の前に、
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植木鉢
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大きな石
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小石
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砂
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があるとします。
あなたはどの順に鉢に入れますか?
もしかして、
「砂▶︎小石▶︎大きな石」
ではありませんか?
実は、植物を育てている人は、この順番と逆にします。育てた経験のない人でも、色々考えて逆にするかもしれません。
ところがです。
仕事になると、多くの人たちが「砂▶︎小石▶︎大きな石」になってしまっています。
どういうことか、解説しますね。
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大きな石(重要で優先すべきこと)
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大きな石は「厄介で時間がかかるが、最も重要で優先すべきこと」を象徴します。例えば、健康管理、重要なプロジェクト、自己学習、キャリアの目標設定などです。これらは誰もが重要と思っていますが、しばしば忙しさの中で後回しにされがちです。
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小石(それなりに重要だが、割とすぐに解決できるもの)
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小石は「中くらいの重要度の業務」を意味します。例えば、必ずしも即座に返事をしなくても良いメール。情報提供を求められるメールや質問への返信なども、相手が期待する期限(一定の時間的バッファー)はあるはずですから、そういう場合は、クイックレスじゃなくていいでしょう。
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また、定期的なファイル整理や書類の管理も小石になるでしょう。これも重要な作業ではありますが、日々の業務において最も優先すべきことではありません。少しずつ時間の空いた時に行うべき仕事です。
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砂(細かい作業や優先順位が低いこと)
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砂は「すぐに対応できるが、さほど重要でないことや、優先度の高くない仕事」を象徴します。例えば、無駄な会話、メールの確認、SNSのチェック、予定外の会議などです。これらは一見してちょっとしたことのように見えますが、時間を大量に消費する原因になります。
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鉢植え(大きな鉢)
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鉢は、あなたの時間や生活の中で最も重要な「全体の容量」を象徴します。つまり、1日は24時間ということです。
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注釈
上記具体例は、状況や目的によって変わる場合があることを念頭においてください。例えば、「隣の部門のマネジャーとのムダ話」も、額面通りで特に目的がないのであれば、それは「砂」に分類されますが、もし「近い将来の隣の部門との協働を視野に入れた人間関係の構築」だったら、これは別な分類になるでしょう。
成功事例
コストコ – シンプルで迅速な業務運営
背景と成功要因: コストコは、販売業務の効率化と従業員の時間管理においてシンプルで実行可能な方法を取り入れています。
具体的な取り組み:
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簡素化された業務プロセス: コストコでは、商品の陳列、在庫管理、チェックアウトの流れを簡素化し、無駄を排除しています。商品の配置やスタッフの動き方、シフトの組み方を最適化することで、業務を効率化しています。
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人員の最適化: 各店舗の従業員数を適切に管理し、ピーク時間でも迅速に対応できるようにしています。スタッフの役割を明確にし、それぞれが自分の仕事に集中できるように工夫されています。
スターバックス – 組織文化と業務管理
背景と成功要因: スターバックスは、店舗での業務効率を高めるために、シンプルで迅速なサービスを提供するための文化を作り上げています。スタッフ間のコミュニケーションとチームワークに重点を置き、業務のタイムマネジメントを実現しています。
具体的な取り組み:
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「モーニングラッシュ」の対応: 朝のピーク時間に、スタッフ全員が非常に迅速かつ効率的に業務をこなすために、事前に明確な役割分担を行います。この時間帯は、スタッフが協力してお客様に素早く対応できるように工夫されています。
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トレーニングと文化: スターバックスは、スタッフに対して高いレベルの接客スキルと業務スピードを養成するためのトレーニングを行っており、その結果、店舗での効率的な時間管理が可能となっています。スタッフ間で積極的にコミュニケーションを取り合い、無駄な時間を減らす文化が根付いています。
ユニクロ – ストア運営の効率化と時間管理
背景と成功要因: ユニクロは、店舗運営における業務効率化とスタッフの時間管理を徹底し、国内外で急成長しました。
具体的な取り組み:
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シフト管理と役割分担: 各店舗でのシフト管理を徹底し、忙しい時間帯には必要なスタッフがしっかり配置されるようにしています。また、各スタッフが専門的な役割を持つことで、業務がスムーズに進行します。
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「業務の見える化」: 店舗の業務を見える化し、スタッフがどの業務にどれくらいの時間を費やすべきかを明確にしています。これにより、無駄な時間を減らし、効果的に業務を進めることができます。
サウスウエスト航空 – 迅速な業務遂行と社員の効率的な時間管理
背景と成功要因: サウスウエスト航空は、業務の効率化と従業員の時間の使い方に関する独自のアプローチを取っています。特に、フライトのターンアラウンド(機体が到着してから次の便に出発するまでの時間)を最短にすることで、無駄な時間を削減しています。
具体的な取り組み:
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迅速なターンアラウンド: サウスウエストは、フライトのターンアラウンド時間を通常より短く設定し、社員が効率よく協力して業務を進める文化を作り上げました。この文化の中で、パイロット、客室乗務員、地上スタッフが迅速に連携し、短時間で次のフライト準備を完了させます。
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フラットな組織構造: 組織がフラットであるため、意思決定のスピードが速く、社員間で情報や指示が迅速に伝達されます。これにより、業務の無駄な時間を削減し、効率的に働ける環境を作り上げました。
共通点は、
3つの変数(時間、スキル、仕事量)
のうち、時間は固定化(当たり前ですが、変えられないもの)し、残り2つの変数をなんとかすることで、器に収めようとしています。
どうやって取り入れたらいいの?
次に、タイムマネジメントを取り入れるためのステップを見ていきましょう。
1.目標設定
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まずは、どんな業務を最優先するべきかを明確にします。長期的な目標や短期的な目標を具体的に設定し、原則、「すべての業務は、目標達成のためのもの」であることを強く意識することが必須です。
2.タスクの優先順位を決める
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業務をリストアップし、重要性と緊急性に基づいて優先順位をつけます。例えば、「アイゼンハワーマトリックス」を使って、「重要かつ緊急なもの」「重要だが緊急でないもの」「緊急だが重要でないもの」「重要でも緊急でもないもの」に分けて整理する方法が効果的です。

第1象限:重要で緊急な仕事・タスク
例えば、顧客からのクレーム対応は、緊急度も高く重要度も高いのではないでしょうか。明日に後回しにできるかを想像してみるとわかりやすいかもしれませんね。
第2象限:重要だが、緊急ではない仕事・タスク
これは、重要なんだけど、後回しにできるものです。例えば、自己研鑽のための勉強とか、部下育成などがこれにあたります。
第3象限:緊急だが、重要度は高くない仕事・タスク
割と出てくるのが「上司からの電話への折り返し」と言った意見も見られますw 他には、SNSできた(さほど重要ではない)メッセージをうっかり既読しちゃった時という意見もあります。
第4象限:緊急でも重要度も高くない仕事・タスク
同僚との立ち話とか、SNSでなんとなくニュースを眺めると言ったものが意見として出てくることが多い印象です。
ただ、ここで注意なのは、同僚との立ち話も何か目的がある場合は、第1象限や第2象限になることがあるので、やみ雲に立ち話だからココ!というわけではないのです。
3.時間のブロック化
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仕事を細かい時間単位に分け、それぞれのタスクにかける時間を決めます。たとえば、1時間を特定のタスクに充て、集中して取り組むことで効率が上がります。
4.休憩の重要性
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長時間の仕事は集中力を欠く原因となるため、定期的に休憩を取り入れることが必要です。ポモドーロテクニックのように、25分作業し5分休憩を繰り返す方法も有効です。
5.時間の無駄を減らす
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仕事に集中できる環境を整え、無駄な会話やSNSのチェックなど、業務に関係ないことを減らします。また、時間が無駄になっていないか定期的に見直すことも大切です。
6.モチベーションでタスクを交互に
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仕事・タスクも、モノによってモチベーションが低いとか苦手なもの、あるいは逆に得意とか興味のあるものってありますよね?
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僕の場合は、それをミックスします。優先度が高いけどイマイチ好きじゃない仕事をやっていて、どうにもこうにも煮詰まっちゃった経験ありませんか?僕はそんな時には、重要度は高いけど、でも今日中の完成がマストじゃない、自分の好きな仕事に着手します。
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これは業務の性格上できる人限定のものですけどね。
7.タイムレコーディング
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タスクに対して、自分がどれくらいの時間を要するかを見積もって、1週間のスケジュールを記入します。
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金曜日になったら、予実チェックをします。予定で見積もった時間と実際のかかった時間の差分をチェックするのです。
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それを参考に、来週のタイムスケジュールを立てます。
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これには2つの利点があります。1つは、時間見積もりの正確性が上がること、2つ目はアイドルタイム(何もしてないか、ムダに消費している時間)に気づくことです。
具体的なツール
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To-Doリスト: 手書きでもアプリでも、やるべきことをリストアップし、進捗を管理します。
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カレンダー: 予定をカレンダーに記入し、時間ごとのアクションプランを立てます。
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タイマーアプリ: 時間を管理するために、仕事と休憩の時間をタイマーで設定します。
タイムマネジメントを取り入れることで、業務を効率的に進め、成果を上げることができるようになります。最初は試行錯誤かもしれませんが、少しずつ習慣にしていけば、自然に上手に時間を使えるようになりますよ。
タイムマネジメントの難しさ
大きく2つあります。
1つは、有限だけど、翌日にはみんなに平等に配分されるということ。
もう一つは、目に見えないことです。
在庫や資材などは見えますが、時間はいつの間にか無くなっていきます。
だからこそ、自分の時間の使い方を可視化して、意識的に時間を過ごすことがとても大事になるのです。
早速今日から、初めてみてくださいね。