リーダーシップと感情 その5

「兵をあげてから8年、わしは70余りもの戦闘に加わり、攻めて良し守ってよしで、いまだ敗北したことがない。だから天下の覇権も握ったのだ。そんなわしが、これほど苦しむのは、天がわしを滅ぼそうとしているからだ。決して戦い方がマズかったわけではない(それに劉邦が強かったわけではない、と言いたかったのではないかと。)   項羽は勇猛果敢で言わばエリートのような存在だった訳で、弱虫でだらしなく元々どうしようもないゴロツキだった劉邦に負けたとは認めたくなかったに違いありません。   張良、簫何、韓信を重用し漢建国の祖となった劉邦は、自分の家臣の働きと項羽との戦いを振り返ってこうコメントしています。   「帷幄(いあく)のなかに謀(はかりごと)をめぐらし、千里の外に勝利を決するという点では」 「わしは張良にかなわない。」   「内政の充実、民生の安定、軍糧の調達、補給路の確保ということでは」 「わしは簫何にはかなわない。」   「百万もの大軍を自在に指揮して、勝利を収めるという点では」 「わしは韓信にはかなわない。」     「この三人はいずれも傑物と言っていい。わしは、その傑物を使いこなすことができた。」   「これこそわしが天下を取った理由だ。」     「項羽には、范増(はんぞう)という傑物がいた。」 「しかし。彼はこのひとりすら使いこなせなかった。これが、わしの餌食になった理由だ。」   自ら剣を取り、勇猛果敢に戦に打って出る項羽。   その目は、末端の家臣にまで心を配り、時に家族の様子を案じ、親が病に伏せっていると聞けばボーナスを与えたり、励ましの言葉を直接かけたりしたようです。 現代のリーダーシップに関する書籍を紐解けば、何ともお手本のような話です。   しかし、一方でそのことを聞いた劉邦は、項羽のその言動が理解できなかったそうです。   「項羽には、信頼できる家臣がいないに違いない。もし、そのような家臣がいるのであれば雑事はすべて任せ、将が末端の兵士にまで心を忙しくする筈がない。」   企業経営で考えれば、どう考えても項羽スタイルに分がありそうです。   任侠の人とも思える劉邦がこのように言うということは(劉邦びいきとしては)、 戦(いくさ)のような緊急事態下では、リーダーはとにかく戦いに集中し生き残りを賭けることが重要で、他のことは雑事であるということなのかもしれません。   最後に再び時間を戻し、項羽と劉邦の性格の違いが良く出ている逸話をご紹介します。 ある時に劉邦は夫役で咸陽に行った際に、始皇帝の行列を見た。 そしてこう言いました。   「ああ、男たる者はあのようにならなくてはいかんな。」     いみじくも同様に始皇帝の行列を見た時、項羽はこう言いました。   「あいつに取って代わってやる。」   リーダーシップを考えるに、なかなか一筋縄ではいかない命題が種々存在するし、そのスタイルも人によって大きく違うこともあります。   また時代背景や組織形態によっても異なります。   しかし、   実行力を持ち、人徳・品性を備えたリーダーが、 ひとたび人の感情を掌握し、 内外の有力者の支援を得、 向かうべき方向にチームを牽引していくときに その組織のエネルギーは大きくなり、そして大事を為すことは、間違いないことでしょう。   このような歴史的事実から見ても、私たちが起業を成功させるには、   ・感情を動かし、 ・重要人物との人脈を築き、支援を得ること   は極めて重要だと言えそうですね。    ]]>

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