リーダーシップと感情 その2

ポジティブ心理学   といいます。   心理測定サービス健康心理学研究所の島井さんと神戸大学大学院国際文化研究科の宇津木さん(2008)によれば、ポジティブ心理学は、1998年にアメリカ心理学会の会長で、ペンシルバニア大学の   マーチン・E.P.セリグマン教授   が提案したものです。 社会心理学において、リーダーシップ研究は古典的ともいえるテーマですが、意外にも今世紀に入るまでやや停滞してた模様です。 しかし、21世紀に入り、研究数が急増しているとのこと。 特に過去10年ほどから急激に伸びている傾向にあるのだとか。 では、リーダーシップのどのような部分に研究がなされているのでしょうか。   過去10年+の研究の中(注)で使用されているキーワードを拾い集めてみると、以下の順番になります。   リーダーシップスタイル(1291件) 組織(1237件) リーダーの質(694件) 個人マネジメント(533件) 組織行動(507件) 変革型リーダーシップ(480件) 注:過去30年のアメリカ心理学会のデータベースPsycInfo参照   長らく心理学の世界では、   人間の心理の本質や その原理を解明すること   が本当の研究とみなされており、それを応用する研究は亜流の研究と考えられてきたようです。 こう言った傾向が、近年変化してきているらしいです。   つまり、自然科学志向だったのが、社会科学。。。経済学や経営学に近づいてきているとのこと。 心理学者のダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞したことでも、その片鱗を窺い知ることができるでしょう。   ポジティブ心理学の神髄は、 不安、うつ、ストレス、攻撃性、劣等感などの「人間の心の動きの弱点」に焦点を当てるのではなく、   心の働きの強みに焦点を当てる   のです。   島井さん(2008)は、以下の6つの強みを充実させる事が重要と主張します。   「知恵」 「勇気」 「人間性」 「正義」 「節度」 「超越性」   以下、6つの説明について島井&宇津木(2008)を引用します。   ●知恵と知識●

・独創性:私は、私の友人から新しい独特のアイディアを持っているといわれる
・好奇心:私は、いつも世の中に好奇心を持っている
・クリティカル思考:必要に応じて、私は非常に合理的に考えることができる
・向学心:私は、何か新しいことを学ぶ時にわくわくする
・大局観:私は、いつも物事をよく見て、幅広く情勢について理解している
  ●勇気●
・勇敢:私は、強い抵抗にあう立場をとることができる
・勤勉:私は、いつも自分が始めたことはきちんと終わらせる
・誠実性:私は、いつも約束を守る
・熱意:私は、人生を横から傍観者としてみているのではなく、 それに全身で参加している
  ●人間性●
・愛情:私は、他の人からの愛を受け入れることができる
・親切:私は、この1カ月以内に、隣人を自発的に助けたことがある
・社会的知能:私は、どのような状況であっても、それに合わせていくことができる
  ●正義●
・市民性:私は、グループの一員として全力を出して働く
・公平性:私は、その人がどうであったかに関係なく、誰にでも平等に対応する
・リーダーシップ:グループ内では、私は、誰もが仲間であると感じることができるように 気を配っている
  ●節度●
・寛大:私は、いつも過去のことは過去のことと考えている
・謙虚:私は、自分の実績を自慢したことがない
・慎重さ:「石橋をたたいて渡る」という言葉は、私の好きな標語のひとつだ
・自己制御:私は、自分の感情をコントロールできる
  ●超越性●
・審美心:私は、誰かの素晴らしさに触れると涙が出そうになることがある
・感謝:私は、いつも私の世話をしてくれる人たちにお礼を言っている
・希望:私は、いつも物事の良い面を見ている
・ユーモア:私は、笑わせることで誰かを明るくする機会があると嬉しい
・精神性:私の人生には、はっきりした目標がある
  昨今の成果主義や雇用の不安定さなどは、働く人間を疲弊させる可能性があると考えらますが、ポジティブ心理学の視点から、Turner, Barling & Zacharatos(2002)は、このような状況で仕事をするという経験を再設計。。。つまり、仕事をする人がより熱心に仕事に取り組むようになる要因は、   「自律性」 「仕事への挑戦」 「社会的交流の機会」   が与えられることであり、これらを通じて自分自身が選択して自分の能力を発揮していると感じるのです。 こういったことが重要なのだそうです。   これに加えて非常に興味深いのは、一見東洋的な概念とも思える、  

「人徳」

  について、先述のセリグマン教授とクリストファー・ピーターソン教授(ミシガン大学)が「Values in Action (VIA)」と言うプロジェクトにおいて重要視していることです。 http://www.viacharacter.org/www/#nav   また、ここでリーダーシップは、強みあるいは、  

「品性」

  の一つと位置付けらています。   リーダーシップが品性と捉えられるとは驚きですが、しかし言われてみれば、なるほどそういうものかという感もあるのは確かですね。   『人間と言う存在に共通の強みあるいは人徳 (virtues) を網羅し、それらを総合的に理解するために、国際的に研究を進めていこうという壮大な試みである(Park, Peterson & Seligman, 2006)』 出典: 島井哲志・宇津木成介「ポジティブ心理学におけるリーダーシップ」経営行動科学、第21巻、第1号、平成20年4月     (続く)    ]]>

リーダーシップと感情 その2」への2件のフィードバック

  1. 嶋崎裕介 返信

    こんばんは。近年になって急激にリーダーシップについて研究され始めたのには、どのような背景があるのでしょうか?個人的には無理やりにでもリーダーを育てないと、競争に勝てなくなって来ていることや、物質的な豊かさから、心の豊かさを求める傾向も影響しているのかなとも思います。それにしても宮本さんの知識の多さには毎日驚かされます。よくこれだけの事を毎日書いてネタが尽きないなと。

    • 宮本 竜弥 投稿者返信

      嶋崎さん、いつもコメントありがとうございます。
      リーダーシップの研究は、案外歴史が古いのですが、ご指摘のように変遷があります。1940年代ころまでは「生まれ持っての資質があるものがリーダーになる」とされ、戦後には「特定の行動がリーダーを創り上げる」というものになりました。また、1980年前後になると「リーダーのカリスマ性」が取り沙汰されるようになりました。ちょうど、ソ連はミヒャエルゴルバチョフ書記長、アメリカはロナルドレーガンが強いリーダーシップを発揮していた頃と重なります。

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